「私たちは絶滅危惧種なんじゃないですか?」

これは5年ほど前、母校である大学のクラブのOB会で1年後輩のR子が発した言葉でした。その時の私は大学を卒業してほぼ30年を経過していました。

OB会の運営をめぐる平成になってからの卒業者と昭和時代の卒業者の意識や態度のギャップが問題になっていて、いろいろ議論する中で発せられた言葉でした。

“絶滅危惧種”とは、このまま何も対策をしなければ地球上から姿を消してしまう生物の品種とでも言いましょうか。EICネットというサイトから引用すると、
「さまざまな要因により個体数が減少し絶滅の危機に瀕している種・亜種を指す。進化の過程では絶滅することも自然のプロセスだが、今日の絶滅は、自然のプロセスとはまったく異なり、さまざまな人間活動の影響のもと、かつてない速さと規模で進んでおり、絶滅の防止は地球環境保全上の重要な課題となっている。」
と書かれています。

その時、R子が言いたかったことは、「我々(昭和時代の卒業生)のような今後人口も減っていく者たちの考えを、若い世代に押しつけるのはいかがなものか? もっと若い世代の意見も取り入れて新しいやり方を考えるべきではないのか?」というニュアンスだったと認識しています。

それも然り。しかし、本当に私(50代以上)は絶滅危惧種なんだろうか? それからというもの、事あるごとに“ゼツメツキグシュ”という言葉が頭をよぎるようになりました。


■大好きなあの商品が売られなくなった

私はハッサク(八朔)が大好きです。1月に入ると、温州みかんの皮と身の間の空間が大きくなる頃、ハッサクや伊予柑などの大型柑橘類が出回る季節です。一昨年のことでした。もうそろそろハッサクの季節だなと思い、いそいそとスーパー(コープこうべ)に週末の買い出しに出かけた時、まず売り場の入口にある20平米以上はあると思われる広い果物売り場にハッサクの姿は見られませんでした。その時並んでいた大型柑橘類の中心は“紅ハッサク”と“伊予柑”でした。

その日、レジを終えてから『お客様の声』のカードに、「紅ハッサクでなくて、普通のハッサクも売ってください」と書いて投函して帰ると、早速次の日にお店から電話がかかってきました。
「このたびは貴重なご意見をいただきましてありがとうございます。」
「いいえ。わざわざお電話もらいまして・・・。昔からあるハッサクは人気がないのですか?」
「はあ、まあ・・・」と言いにくそうなお店の主任さん。
「私はハッサクのあのちょっと苦くてさっぱりしたところが好きなんです。紅ハッサクも食べてみましたが、ほろ苦くなくて甘いですよね。甘い方が万人受けするのは分かるんですが、普通のハッサクも是非売ってください。」
「分かりました。仕入れるように致しますので、しばらくお待ちください。」

そんなやり取りがあって一週間後、また週末の買い出しに出かけてみると、1個売りの大きいリンゴやグレープフルーツなどが並ぶ冷蔵ケースの方に、少しだけ黄色いハッサクが並んでいました。せっかく仕入れてくれたのだから買い支えなくちゃと思い、購入しましたが、4個でいくらという売られ方をしている紅ハッサクとは扱いがえらく違うし割高なので量は売れないだろうと思いました。

この一件があった時に“ゼツメツキグシュ”という言葉が頭をよぎりました。ハッサクが好きな人は絶滅危惧種なんだろうか?

でも、この店はちゃんと“紅ハッサク”と書いているだけマシです。会社の近くにある他の全国展開している某スーパーでは、どう見てもオレンジがかった色の紅ハッサクを“ハッサク”と表示して売っているではありませんか。もちろんハッサク類であることは確かなので誤表示とは言えないのかも知れませんが、このようにして行く行くは“ハッサク=紅ハッサク”になってしまうのだろうと思いました。

ハッサクは一例なのですが、これに類するシーンにたびたび遭遇します。ネットショッピングが発達したこんな時代ですから、お取り寄せすれば欲しいものを手に入れられないわけではありません。けど、何でもかんでもお取り寄せばかりもしていられないじゃありませんか。いつも利用するお店で気軽に買いたいじゃないですか。


■50代以上は絶滅危惧種なのか?

平成20年10月1日現在の推計人口(総務省)によると、50歳以上の人口は54,836千人、49歳以下の人口は72,858千人。50歳以上が総人口に占める割合は約43%です。もちろんこの時点で50歳以上だった人たちはこれからどんどん減っていきます。でも、50歳以上が占める割合は今後も拡大します。平成20年10月1日時点で最も人口が多い年齢は59歳で2,280千人もいるのに、0歳は1,101千人と59歳の代のほぼ半分ですから。

既に4割を超えるシニア(仮に50代以上をシニアと呼ぶことにします)を絶滅危惧種とは呼べないでしょう。

ハッサクの例は嗜好がからむので、話が複雑かも知れません。が、何十年も生きてきて、その中で沢山の経験をしたシニアは、何も古いものにだけ固執している訳ではないのです。昔食べて(食べ物だけではなく使ったり経験して)美味しかったモノや好きなモノは、今も食べたいのです。けれど、過去に捨て去ったものも、飽き飽きしたものもあるのです。戦後の激しい変化をリアルタイムで経験しながら年をとってきたのだから、その過程で多くの新しいモノを得、一方で古いモノを捨ててきたのが私たちだということでしょうか。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:グルメ・料理

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。